リビングセンターOZONEでは設計・施工のプロフェッショナルの方を対象に、館内ショールームの製品をお試しいただく 『モニター企画』を2020年から実施しており、採用された施工事例をWEB OZONEで順次ご紹介しています。
『モニター企画』の詳細はこちら(※募集は終了しています)
2022年春に竣工した栃木県さくら市の個人住宅。瀬尾製作所の製品である日本の伝統的な雨樋:鎖樋(くさりとい)【SEO RAIN CHAIN “竹”】は、このお宅にモニター採用されました。設計・施工を担当したのは地元企業の株式会社けんちくや前長。その代表取締役:前澤昌弘さんの自邸であり、けんちくや前長の住宅建築に関する考え方を盛り込んだ実験的モデルハウスでもあるこの家で、モニター製品はどのように使われているのでしょうか。この家と【SEO RAIN CHAIN “竹”】の魅力について前澤さんにお話いただきました。
―前澤さんが施主であり、施工会社の代表にもなるわけですが、まずは株式会社けんちくや前長の概要についてお聞かせください。
前澤さん 父親が1983年に創業し、私が二代目になります。もともと材木業を営んでいて建築業に進出した経緯があるので、木へのこだわりをモットーとしています。今から20年ほど前に「現代民家 素足の家」というブランドを立ち上げ、現代の暮らしにマッチする設備や間取りを備えながら、地域の素材を使って職人が建てる循環型の住まいを提案しています。杉材の風合いの素晴らしさを伝えたくて、杉を床に使うことをお勧めすることが多いですね。杉は柔らかいので床への使用は避けられがちですが、素足で杉の床を歩く気持ちよさは格別なんです。だから「素足の家」と名付けました。
それから、大工が持っている技術や伝統的な工法なども大事にしています。建設作業の機械化が進み、大工が「職人」ではなく「作業員」のような働き方になっていくのをなんとかしたい、木を取り扱う洗練された技術をしっかり受け継いでいきたい思いがあります。ですので「素足の家」を始めてから20年間、弊社では一切プレカットは使わず、大工が墨付けきざみで木組みを行っています。山に木が豊富にあって、近くに大工が住んでいて、家を建てたい人がいれば、地元の木を使って地元の大工が家を建てる……という極めて当たり前のことを今後も進めていきたいですね。
―この家を建てるにあたっては、どのようなポイントを大切にされたのでしょうか。
前澤さん まずは夏の暑さにしっかり対応できる家を目指しました。今後の気候変動の影響なども考えると、夏に家族をどう守り、かつ、エネルギー消費をどう抑えるかは大きな課題です。この家は木造であり、断熱材も含めて木で構成されている点では、日本では珍しいレベルの高度な気密・断熱性能を備えていて、かつ、蓄熱量の大きい建物です。日射取得、重力換気などの、パッシブなデザインを取り入れています。ラジエターによる除湿型放射冷暖房機は備えてありますが、いわゆるエアコンは設置していません。南側の外壁は、日射熱と水分を吸収するのに十分な35mmの厚さで地元産の檜(ひのき)材をルーバー式に斜め重ねにしてあります。これらの工夫により、外気温が大きく変化しても室内は常にほぼ一定の温度・湿度を保つことができ、今年の夏の暑さには十分対応できました。まず自分で暮らしてみて、改良すべきところは直し、よいものはどんどんお客さんに進めていきたい…… この家はそういう実験を行うモデルハウスでもあるんです。
前出の通り、断熱材にも木由来のウッドファイバー等を使っていますし、内壁は栃木県産の漆喰による左官仕事、玄関周りには地元の石を使っていますが、一部で以前は別の場所で塀に使われていた大谷石をリユースしています。自然素材やアップサイクル素材を活用することも、当たり前のようにやっていきたいですね。
―庭や外構計画はどのような点を工夫されましたか?
庭に関しては庭師の方ともいろいろと相談し、提案もしていただいたんですが、南側の檜の外壁の印象が強くて、どんなに作り込んでも建物に負けるよと言われてしまいました(笑) ならばいっそ、人工的な造作は最小限にして自然の原っぱのような庭にしようということになりました。この家にはまだ小さい子どもたちもいるので、綺麗に整った庭よりも、虫を追いかけたり泥んこ遊びができる、牧草地のような庭こそふさわしいだろうと、家族もみな納得してくれました。
―そんなこだわりの詰まったこのお宅に使用するために、瀬尾製作所のモニター商品:
鎖樋【SEO RAIN CHAIN “竹”】にご応募いただいたわけですが、なぜこの商品に注目されたのでしょうか。
前澤さん 南側の軒が大きく張り出しているので、やはり雨樋が必要でしたが、壁面に竪樋を這わせると、どうしても外観を邪魔してしまうので困っていました。また屋根の面積が広いので、竪樋で受けるとしたら2本必要になってしまうんです。なにか良いアイデアはないかと探しているうちに、瀬尾製作所さんのウェブサイトでこの商品を見つけて、その格好良さに鳥肌が立ちました。鎖樋を水が伝い落ちていく動画を何回も見て、「これしかない!」と、いきなり瀬尾製作所さんに電話してしまったんですが、そこでリビングセンターOZONEでモニターを募集していることを伺い、即、応募しました。
いくつかの商品の中から選択できたんですが、迷わずこの“竹”を選びましたね。節のある竹を模したスタイリッシュなデザインが、強く和のテイストを感じさせてくれますし、銅の質感も実にモダンな印象を受けました。木をふんだんに使った和風の住宅でありながら、モダンな味わいにもこだわったこの家には、“竹”がきっと一番似合うに違いないと思ったんです。軒先から地面までの距離がかなりあるこの家の環境では、鎖そのものが長く連続した棒状のように見えるタイプだと、ちょっとうるさくなってしまうかな……という判断もありました。
―実際に取り付けてみて、いかがでしたか?
前澤さん モニターに当選し、実際に取り付けてみると、もうこの家に設置するためにデザインされたんじゃないかと思うくらい見事に似合っていましたね(笑) 特に檜材がルーバー状に重なっている南側の外壁と、破線状に真っ直ぐ天地をつなぐ鎖樋のデザインは、うまく溶け合っていると思います。素材は銅ですがキラキラ光るようなテクスチャーではなく、しかもしばらく使っているうちに色が枯れて、いい渋みも出てきました。瀬尾製作所さんには、地面との接点で鎖を押さえる純正の錘(おもり)の製品もあるんですが、それはあえて使用せず、先ほどお話した原っぱのような庭になじむよう、地元の河で採れる石を使った簡素な石組みで受けるような形に設えました。実際、大雨が降っても水をよく受け流してくれますし、よほどの大風でも吹かない限り、周囲に雨水を散らしたり、樋からあふれてしまうようなこともありません。樋の内径や流速をしっかり考えての設計なんだと思いますが、水の流れ落ち方がとても綺麗に見えますね。
―家と庭と鎖樋とのマッチングを十分に楽しまれているようですね。
前澤さん 雨の日に窓を開けると、なんとも言えない「シュ~~」という音を立てながら水が流れ落ちていくのが見えるし、聴こえるんですが、その風情が素晴らしいですね。不規則に揺らいでいるものをぼんやり眺めていると癒されると、よく言われていますけど、まさにそんな感覚で和むんです。水流を筒で隠してしまう竪樋では感じることができない楽しみ方ですよね。普通に考えれば「排水を隠す」のは当然ですけど、それをあえて見せて、逆に風景や音の演出に変えてしまうなんて、日本ならでは感性なんじゃないでしょうか。雨=憂鬱ではなく、「雨の日もいいもんだな」と思わせてくれる存在感があるんです。瀬尾製作所さんの鎖樋の導入を検討される方は、玄関とか家の裏手などに取り付けてしまうのはもったいないかもしれないですね。この風情をより楽しむためには、ぜひ家の中から眺めることができる場所、音を聴くことができる場所に設置することをお勧めしたいです。
竣工したての3月末と暑くなった7月末、これまで二度オープンハウスを開催していて、多くの建築関係者に見学していただいたんですが、その時にも、この【SEO RAIN CHAIN “竹”】はずいぶん注目を集めていて、とても評判がよかったですよ。いい出会いをさせていただきました。
撮影/大倉 英揮
※2022年11月時点の情報です。最新の情報とは異なる場合がございます。
7F 【瀬尾製作所展示室 SEO TOKYO SHOWROOM】
【瀬尾製作所 公式サイト】
鎖樋(くさりとい)紹介サイト「SEO RAIN CHAIN」
「SEO RAIN CHAIN」と仏具「Sotto(ソット)」の2ブランドをご紹介する瀬尾製作所株式会社の公式サイト
【今回のモニター募集にご参加いただいた施主:前澤さんの施工会社】
株式会社けんちくや前長