<OZONEマテリアルツアーfor Professional>
リビングデザインセンターOZONEには、建材から家具、住宅設備まで個性豊かなショールームが揃っています。設計・インテリアデザインに関わる学生やプロフェッショナルの方に向け、OZONE館内のショールームをより深く知っていただくサービスのひとつとして、「OZONEマテリアルツアー for Professional」を実施しています。コースは、建材を中心としたショールームを巡る「商品説明コース」(1~3名まで)と、ご参加いただく方のニーズに合わせてカスタマイズができる「商材選択コース」(4名以上)の二つ。今回は、2022年6月に実施された、建築設計や商空間デザインを学ぶ専門学校の学生25名が参加したマテリアルツアーの内容を紹介します。
専門学校の皆さんが選択したのは、「商材選択コース」のうち、特に「建材」を深堀りするプログラム。約1時間のツアーのなかで、7F【SWANTILE東京ショールーム】、5F【国産木材の魅力発信拠点 MOCTION】、6F【マルホンショールーム MOKUZAI.com】を巡り、製品に触れ、スタッフと語らうことを通じて、開発の背景やスタッフの思いなど、webやカタログだけではわからない、各種建材のリアルな魅力を感じていただきました。
―【SWANTILE東京ショールーム】
美濃焼をルーツに持つ大窯業地として名高い岐阜県多治見市。そこに本社がある株式会社日東製陶所と、そのグループ会社である株式会社TChicが運営する内装・外装用タイルの専門ブランドが「SWANTILE」です。全国一のタイル生産量を誇る多治見市にあって、釉薬からタイルの製造までを一貫して自社で行っている唯一の企業です。
陶器と釉薬というと、バケツのような大きな容器に入った釉薬に、生地の状態の器をドボンと漬けるようなイメージがあるかもしれませんが、今、タイル業界の最新技術では、インクジェットプリンターで様々な図柄を付けることが可能になっています。今回のツアーでは、インクジェットプリンターで図柄が描かれたタイルの、焼成前と焼成後の状態を見比べ、その色合いやディテールの鮮やかさ、焼成によって浮かび上がるタイルの質感などを体験しました。タイルという建材は、日光や風雨に強く、耐久性が高いため、今後はこうした技術を応用した外装材や表札の製作、これまでのタイルでは表現できなかった木目柄など、様々な用途の拡がりが想定されているそうです。
Ask The Staff
学生からの質問にショールームスタッフが答えました。
Q:タイルの焼成にはどれくらいの時間がかかるのですか?
A:窯や釉薬の種類によっても大きく異なりますが、短いものだと1時間程度、長いものだと24時間くらいの時間をかけて焼成しています。
Q:タイルは表面がツルツルしているので、靴によっては滑りやすいイメージがありますが、滑りにくいタイルもありますか?
A:外装床用のシリーズ「さらっとグリップ」は、防滑性を重視した商品です。タイル表面が非常に小さな粒子で均一に覆われているため、手触りはスベスベで汚れも落ちやすいにも関わらず、細粒のおかげで滑りにくい性質を兼ね備えています。
Q:タイルの角の面取りはしてありますか?
A:素足で歩くような場所での使用が想定される商品はあらかじめ角を落としてありますが、それ以外の商品の面取りも可能です。
―【国産木材の魅力発信拠点 MOCTION】
【国産木材の魅力発信拠点 MOCTION】は国産木材の活用促進を目的に、東京都がオープンしたショールーム。公共施設を建設する自治体、大きな建築物を扱う事業者、新たに住宅を建てたい個人など様々な方を対象に、東京都産の木材である「多摩産材」の利用や、有利な法制度の活用方法を紹介しています。
東京2020オリンピック・パラリンピックの主会場として使われた新しい国立競技場。その設計を担当された建築家の隈研吾さんがMOCTIONの館長を務めています。国立競技場でも木材がふんだんに使われていましたが、木は二酸化炭素を吸収し、木材化されてもそれを固定化し続ける特性を持つ素材として、気候変動や陸上生態系などに関わるSDGsの諸課題にも密接に関わってきます。MOCTIONでは、公共施設やオフィスをできるだけ「木質化」することを目標に、多摩産材だけでなく、全国各地の国産木材と木質化に関する様々な活動情報を提供しているのも特徴です。MOCTIONのスペースの半分は、2週間のサイクルで様々な都道府県の木質化の取り組みを紹介していますが、ツアー当日は、高知県の一般社団法人高知県木材協会の活動や木製玩具、木のバッグなどが展示されていました。
Ask The Staff
学生からの質問にショールームスタッフが答えました。
Q:パソコンの端末ではどんな情報が見られるんでしょうか?
A:全国各地にどのような国産材があり、どんな木質化活動が行われているか、どんな助成制度が利用できるか……などを検索できるようになっています。例えば、「自分の生まれた土地の近くの認証材を使って家を建てたいが、どうしたよいか?」などのお客様のご要望にすぐに応えられるようになっています。
Q:MOCTIONに設置してある、ソファーなどの家具はなんですか?
A:「カーボン・ストック・ファニチャー」といって、オフィスの木質化を象徴する家具です。より多くのCO2を家具として貯蔵することを目的に、開孔や切り欠きなどの加工をせずに挟み込むことで材を固定する構造にしています。また、木造住宅などの建材として一般的に利用されている105×105mmの角材と同じ寸法にすることで、再利用性や汎用性を高めています。もちろん、森林認証等を取得した産地の特定できる木材のみを利用しています。
―【マルホンショールーム MOKUZAI.com】
「体感型ショールーム」と銘打ち、約50樹種の無垢木材のフローリング・壁・天井材の手触り、質感、風合い、香りなどを実際に感じながら選んでいくことができる【マルホンショールーム MOKUZAI.com】。運営主体の株式会社マルホンは、無垢材を取り扱う企業の責任として、業界でもいち早くFSC認証材、PEFC認証材の使用を開始した企業です。
空気が乾燥すると水分を発散し、湿気が多いと水分を吸収して部屋の湿度を自然に調節する「調湿作用」や、コルクや畳のような柔らかさを感じるものから石やコンクリートのように硬いものまで、樹種によって様々な風合いを感じることができるなど、無垢材を内装に使う利点や楽しみ方は様々。さらに釿(ちょうな)を使った削り跡の風合いを表現した「なぐり加工」や、木目の凹凸を強調する「浮造り(うづくり)」のように、表面のテクスチャーを加工することができるのも、厚みのある無垢木材ならではの贅沢です。
ショールーム内でもっとも柔らかい「スギ」材と、とても硬い「イペ」材の床とを実際に踏み比べてみました。無垢材、特に柔らかい木材は空気をたくさん含んでおり、熱伝導率が低いのが特徴です。そのため、肌に触れたときに冷たさを感じず、ほんのりとしたぬくもりが伝わってきます。靴を脱いでフローリングを直接踏みしめたり、手で触れてみると、その違いがよくわかります。
Ask The Staff
学生からの質問にショールームスタッフが答えました。
Q:土足の場所でも使える無垢のフローリング材はありますか?
A:土足専用のものがあるわけではありませんが、十分な硬さを持った木材であれば土足の空間での使用も問題ありません。経年で多少の傷は付きますが、上質な革製品やデニムのように、それが良い風合いとして育っていくのが、合板やプリントのフローリングにはない、無垢材ならではの魅力でもあります。
Q:表面の色合いも経年で変化しますか?
A:年月が経つと色合いは変化します。もちろん樹種によっても大きく異なりますが、主に紫外線の影響で色は変わっていきます。時間の経過による風合いや色合いの変化も想定しながら空間をデザインできるのも、無垢材を内装に使うことの楽しさの一つだと言えるでしょう。
約60分で3つのショールームを巡るというボリュームのある体験コースとなりましたが、ツアー終了後、興味を持ったショールームを再訪したり、まだ見ていないショールームを訪ねたりと、充実した時間を過ごしました。参加人数や目的によって、さまざまなカスタマイズが可能な「OZONEマテリアルツアー for Professional」(事前予約制)。 ご興味のある方は、下記より詳細内容をご確認ください。
※2022年6月時点の情報です。最新の情報とは異なる場合がございます。