美濃焼をルーツに持つ大窯業地として名高い岐阜県多治見市。そこに本社を構える老舗タイルメーカー:株式会社日東製陶所と、そのグループ会社である株式会社TChic(ティーシック)、株式会社スワンクラフトなどが合同で運営する内装・外装用タイルの専門ブランド「SWANTILE」。7F「SWANTILE東京ショールーム」は、関東におけるSWANTILEの拠点であり、3F【OZONEカタログライブラリー】で開催した企画展-住まいのSDGs- これからのものづくりとエシカルな選択(会期:2022年09月01日(木)〜12月20日(火)※現在は終了)にも、新商品「アンナフル」が出展されています。SDGs諸課題やエシカルな暮らしについての思いは、SWANTILEの製品や活動にどのように反映されているのか。株式会社日東製陶所 営業開発課主任:清野諒さんにお話しを伺いました。

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リビングデザインセンターOZONE 7F【SWANTILE東京ショールーム】

―数社を跨ぐ統合ブランド「スワンタイル」

「タイルに関するあらゆる事業を自社周辺でできるだけ完結させたいという思いのもと、1950年創業の『株式会社日東製陶所』を中心として、床タイルに特化した『株式会社TChic』や、タイル加工を専門とする『株式会社スワンクラフト』など、様々な関連会社と協力しあって“SWANTILE”というブランドを運営しています。日東製陶所は1日1万㎡以上のタイルを製造している、多治見でも規模の大きいタイルメーカーになります。また、焼き物の業界は伝統的に分業制で、通常は釉薬を作る会社、生地を作る会社、窯で焼成を行う会社、梱包を行う会社までが別々に存在していますが、当社ではこれらを自社内で一貫して取り扱える体制を整えています。特に、釉薬の研究開発を行っている『若尾化学工業所』は当グループのルーツでもあり、自社で釉薬を開発できることは大きな強みになっています。昭和の時代にはヨーロッパ向けにモザイクタイルの輸出も行っていましたが、現在では国内向けが中心、かつ、日東製陶所としての製品の9割近くが外壁用のタイルになっています。そこで床タイルにも進出すべく、2014年に設立したのが床タイル専門のTChicということになります。」(清野)

「SWANTILE」とは、これらタイルのエキスパート数社を跨いで展開する、外装・内装、床・壁を横断して取り扱うことのできる統合ブランドということになるわけですが、なぜ、「スワン」をシンボルとしたのでしょうか?

「日東製陶所として、ヨーロッパ向けにモザイクタイルの輸出を行っていた創業当初の頃から、スワンのブランドマークは使っていたそうです。海外にも羽ばたいていける渡り鳥のイメージと、一見優雅ですが水面下では激しく足を動かして生き抜く強かさを持つ白鳥になぞらえ、ものづくりに対する矜持を込めています。外装壁タイルからさらに商品の幅を広げ、関連会社が増えていく中、創業時から持っていたスワンのイメージを、統合的なブランドのシンボルとしてあらためて据え直した形になります。」(清野)

―超汚れ防止機能付きタイル「らくらくり~ん」とは

3F「OZONEカタログライブラリー」で開催したの企画展『-住まいのSDGs- これからのものづくりとエシカルな選択』では、館内ショールームおよびカタログ登録企業のサステナブルな取組みや製品を紹介し、それを使用することがどのような支援につながるかを紹介していました。SWANTILEが出展した外装床タイル「アンナフル」は、人気シリーズ「超汚れ防止機能付きタイル らくらくり~ん」の新しいラインナップとして今年エントリーされた商品とのこと。そもそも、「らくらくり~ん」とはどのような商品なのでしょうか?

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超汚れ防止機能付きタイル「らくらくり~ん」を使用した某駅自由通路コンコースの床。同時期に敷設された右側の他社タイルが黒ずんでいるのに比べ、左側の「らくらくり~ん」のタイルは汚れがつきにくく落ちやすいため、敷設当時の色合いをキープしている。

「外装用の床タイルは、雨など水に濡れても滑らないようにするため、グリップのしっかり効いた表面に仕上げる必要があります。しかし、そうすると表面がザラザラしたテクスチャーになり、汚れがつきやすく、落ちにくく、掃除もしづらくなってしまうわけです。これはタイルメーカーとしての私たちが長年抱えていた大きなジレンマでした。「らくらくり~ん」は、タイル表面の細かな孔を高硬度の無機質ガラスで覆っているため、グリップ力は維持したまま、汚れが付着しづらい状態を実現しています。SWANTILEのYoutubeチャンネルでも実験動画を公開していますが、油性マジックで真っ黒に塗ったタイル表面の汚れが、水とスポンジでこすっただけできれいに落ちていく様子を確認することができます。この実験は、OZONE 7F【SWANTILE東京ショールーム】でもお試しいただけますよ。」(清野)

―アンナフルの3つの特長

では、新商品「アンナフル」はどのような観点から企画展<-住まいのSDGs- これからのものづくりとエシカルな選択>に出展されたのでしょうか。

「まず一つは、グリーン購入法適合商品であることです。タイル製造においては、原料のうち再生材料が20%以上(重量比)を占めていること、重金属などの有害な物質が溶け出す問題がないことなどが適合の条件ですが、アンナフルをはじめ、当社の国産タイル製品はほぼ全てがこの条件をクリアしています。解体現場から出た廃タイルや、当社工場の製造過程で排出される端材タイルなどを粉々に砕いて、もう一度タイルとして再生させているわけです。タイルの原料は化学変化や劣化、腐敗などが少ない無機物中心なので、元のタイルとそれほど変わらない品質での再生利用が可能です。加えて、アンナフルに関しては、通常よりも小さめの400×200サイズの長方形タイルを用意していて、玄関やポーチなど、小さな空間でも無駄なくタイルを敷設することが可能です。また、もちろん“らくらくり~ん”の機能もありますので、汚れがつきにくく、当初の色合い・風合いのまま長い間お使いいただけますし、清掃の労力や資材、電力なども節約できるという点もあります。環境負荷軽減と省資源、そして愛着を持って長く使い続けられるタイルであること、この3点でアンナフルを推奨しました。」(清野)

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「アンナフル」の商品見本。長方形タイルなので、規則正しく置くことも、レンガ積みのように交互に配置することも可能。

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「アンナフル」の商品見本。長方形タイルなので、規則正しく置くことも、レンガ積みのように交互に配置することも可能。

―テクノロジーの活用、再生材料研究、そしてCO2排出削減へのチャレンジ

天然石の風合いをリアルに再現した新商品「アンナフル」をはじめ、他にも「らくらくり~ん」シリーズには御影石、コンクリート、クォーツサイト、砂岩、テラコッタ、堆積岩、幾何学模様など、多種多様な素材の風合いを再現した図柄のタイルが用意されています。しかし、繊細な表面処理が必要な「らくらくり~ん」の機能は、こうした図柄の表現でその効果が左右されてしまうようなことはないのでしょうか?

「現在当社ではほとんどの場合、釉薬をインクのように扱うタイル専用のインクジェットプリンターで図柄表現を行っているため、どのような図柄であっても“らくらくり~ん”の効果に大きな差が出てしまうようなことはありません。またインクジェットによる印刷技術は、釉薬や水資源の節約という点でも大きな効果があります。必要な分だけ吹き付ける仕組みなので無駄な釉薬の使用を大幅にカットすることができるわけです。また、かつては一つの釉薬を使用したあと、大量の洗浄水を使って工場のラインを丸ごと洗い流す必要があったんですが、インクジェット式ではその必要がありません。汚れた水の排出量も大幅に減っています。SWANTILEでは、こうしたタイルとインクジェットによる図柄表現の可能性を高く評価していて、たとえば、希少種の天然石など、この先いつまでも使い続けることのできない素材のテクスチャーをスキャニング保存し、タイルとインクジェットの技術で再現する試みなども積極的に行っていきたいと考えています。もちろん、本物の風合いには適わないかもしれませんが、こうした手法で伝統的な建築様式や意匠文化などを後世に残すことも大切だと考えています。」(清野)

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釉薬の廃棄物「釉薬汚泥」。これを再生材料として活用しようとすると、タイルを焼くときの収縮率に影響が出やすくなってしまうのが目下の研究課題だという。

環境保全というと、動物や植物、海洋などの環境をイメージしがちですが、希少なものが絶滅の危機にあるのは土や石の世界でも同じことなのだと、あらためて考えさせられます。またSWANTILEでは、「アンナフル」や「らくらくり~ん」以外でも、SDGsの諸課題やエシカルな暮らしへの眼差しを持った様々な活動を行っているそうです。

「タイルに釉薬をかける工程で、どうしても余分な釉薬が流れ落ちてしまいますが、それを回収し、水分を抜いて粘土状に固めた“釉薬汚泥”というものが廃棄物として出ます。現在、それを新たな再生材料として活用できないか、研究を重ねているところです。技術的にはグリーン購入法適合基準である20%の含有率は既に実現していますが、具体的な商品化までにはさらに研究が必要です。また、グループ各社および各工場では、再生可能エネルギー発電100%の電力を使用していますし、TChicの工場の大屋根には太陽光発電システムを設置して、そこで得られた電力で工場を稼働させています。そして、これは焼き物の工場ならではだと思いますが、タイルを焼成するトンネルキルン(窯)の内部温度は1200℃にもおよび、焼成直後のタイルからは猛烈な熱が放出されます。この熱を、焼成する前の生地を乾燥させる工程に活用できるように工場のラインを組んでいます。それから最も根本的な話を。かつては重油を使って窯に火を入れていましたが、現在では比較的CO2排出量の少ない液化天然ガスを使用しています。しかし、そうすると炎に含まれるガスの成分が変わり、釉薬の化学反応も変わってくるので、焼成後のタイルの色合いに変化が起きてしまうんです。それを新たな釉薬の開発で乗り越え、品質を維持・向上させるのも大切な研究の一つです。」(清野)

陶器を焼く「窯」が存在する以上、CO2の排出は窯業にとって避けようのない宿命のようなもの。その宿命に、釉薬の研究開発という創業以来の得意の技術を絡めて立ち向かおうというSWANTILEの姿勢には、水面下で激しく足を動かす白鳥の強かさが確かに息づいているように思えます。

―ショールームよりメッセージ

お客さまに、もっとタイルを身近に感じていただきたい、そんなスタッフの想いからSWANTILE東京ショールームは生まれました。商品アドバイスから、イメージ提案までお手伝いをさせていただきます。また、カタログやwebサイトでは伝えることのできない、焼き物特有の色や質感をご確認いただくため、スワンタイルのほぼ全ての商品を展示しております。お気軽にご利用ください。
【株式会社日東製陶所 営業開発課主任:清野諒さん】

※文中敬称略

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SWANTILEの内外壁タイル「リグレイズ」をはじめ、ムラコシ精工のアルミフレーム扉や壁面アルミレールユニット「WRS」、瀬尾製作所展示室の鎖樋、共和成産の「レーザーボード樹木シリーズ」、三浦工業の家庭用軟水器「軟太郎ソフティナ」のモニターを募集しています。
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※2022年11月時点の情報です。最新の情報とは異なる場合がございます。

SWANTILE東京ショールーム

館内ショールーム

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