2023年2月より、リビングデザインセンターOZONEに新たなショールーム【KYOWA SEISAN 新宿ギャラリー】が加わりました。美しい加工が施された壁面用木製パネルなどがディスプレイされた本ショールームの出展主体は、壁材を中心とした木質建材メーカーである共和成産株式会社です。会社の成り立ちや現在の製品の特長、【KYOWA SEISAN 新宿ギャラリー】で皆さんに紹介したい商品や技術などについて、共和成産株式会社営業部長の柘植彰浩さんにお話を伺いました。
ルーツは茶箱などの梱包資材の製作
―共和成産の創業当時の様子や事業内容は、どのようなものだったのでしょうか?
柘植 1956年の創業当時は現在の藤枝市ではなく静岡市内に本社があり、社名も「共和ベニヤ株式会社」というものでした。その名の通り、べニヤを使った輸送用梱包資材を作っていまして、中でも大きな割合を占めていたのが、地元:静岡の産品であるお茶の輸出に使うベニヤチェスト…… いわゆる「茶箱」でした。
その後は冷蔵庫やカラーテレビなどの大型家電製品専用の梱包資材の生産や、段ボール箱などに収まらない大型の工作機械を木枠の中に収納するなど、梱包作業自体を請け負うサービス業も併設していました。1966年には本田技研工業さんがオートバイの輸出を開始したんですが、それに伴う梱包業務一式を当社が受注する形になり、しばらくは大忙しの日々が続いていきます。
―梱包資材の製作を含む梱包業というと、現在の業態とは大きく違っていたわけですね。では、現在のような住宅用建材の生産はどのようなきっかけで始まるのでしょうか?
柘植 1970年頃、海外での環境保全意識の高まりから、木材を潤沢に使った梱包による輸出が徐々に制限されるようになってきたのに加え、いわゆる「ニクソンショック」によって世界経済や輸出産業が混乱期に入ったため、当社も大きな打撃を受け、事業転換を迫られるようになりました。そこで目を付けたのが、使い慣れた木材とその加工技術を応用できる、公営住宅用の間仕切りパネルでした。折しも高度成長期の公営住宅、いわゆる団地建設ラッシュでしたので、安定した品質で工事ができ、無駄になる残材も少なく、工期も圧縮できるパネルは大きな人気となりました。現在でも当社の売り上げの多くをこのタイプの製品が占めています。
インテリア、エクステリア、マテリアルの三分野にわたる抱負な品揃え
―大胆な業態転換によって住宅資材生産が事業の中心となったということですが、現在の製品ラインナップはどのようなものなのでしょうか?
柘植 インテリア、エクステリア、マテリアルの三分野に商品群を整理しています。今でこそ内装材を中心としたインテリア資材が大半を占めていますが、当初は濡れ縁や庇(ひさし)、ヤギリなどのエクステリア資材を多く生産していました。和風の外観の住宅が減ってきたことと、住宅・建材メーカーがメンテナンス性を理由に外に木材を使うことを避ける傾向になってきたことを受け、少しずつインテリアの割合が増えています。
これらの製品は、当社でももちろん販売していますが、大手建材メーカーにも納入しています。いわゆる受注によるOEM生産とは違い、商品企画から価格設定まで当社が主導で行い、メーカーさんに提案・納品しているものです。内装・外装ともに、現場での在来工法や丁寧な造作に対応できる腕を持った大工さんが、今後はどうしても人手不足になっていきますので、あらかじめ工場で製作した、こうした木質製品を現場で取り付けるタイプの工事が増えていくものと考えています。
―残る「マテリアル」とは、どういった商品のことを指すのでしょうか?
柘植 「ハードウッド」と呼んでいる耐久性の高い硬質の外材や、「コンポジットウッド」という、リサイクルによる木片に樹脂を混合した、虫食い、ねじれ、ささくれのない舗装用の人工木材で、いずれも屋外のウッドデッキなどに適した資材としてお勧めしています。また、いわゆる素材そのものを販売するのではなく、当社の加工技術を活かしたフローリング材の加工サービスなども行っています。釿(ちょうな)で板の表面を荒く削った、いわゆる「なぐり加工」など、昔ながらの手作業の風合いを再現した様々なテクスチャーでの加工を受注しています。お客様から材をお預かりして加工だけを行うサービスですが、とても人気があります。
様々な加工機を駆使した美しい木質パネル製品
―今も加工技術のお話が出ましたが、【KYOWA SEISAN 新宿ギャラリー】に展示されている各種の木質パネル製品も、とても精密・複雑な加工が施されたものが多いですね。
柘植 陰影の浮き出る柔らかな切削加工をしている「カービングボード」「ブラインドパネル」などの商品や、先ほどお話した「なぐり加工」サービスは、主に「NCルータ」という回転式のドリルを基本とした工作機械によるものです。独自に機械をカスタマイズしたり、オリジナルの刃先を開発したりなど、当社にしかできない風合い表現を目指して、常に研究開発を行っています。
また、鋭くエッジの立った精細な切り抜き加工の「レーザーボード」などの商品は、主に「炭酸ガス二次元レーザー加工機」という工作機械を使ったものです。レーザーで焼き切る仕組みなので、切り口にどうしても焦げ色が出ますが、それがかえって印象的なコントラストになってシャープな見栄えになります。こちらはお客様からCADデータを頂ければ、一枚からでもその通りに加工して納品するサービスも行っています。
―自動化された加工機器を使った木工製品の精密さが共和成産の大きな強みということですが、先端技術を使った次の開発目標や挑戦したいビジネスモデルなどは他にもありますか?
柘植 加工機の数値制御だけでなく、製品の管理や建設現場での省力化に向けたIoT技術の導入を現在研究しているところです。具体的には電波を用いてデータを非接触で読み書きするシステム、いわゆる「RFIDタグ」の導入を検討しています。ユニクロさんが商品に付いているタグを瞬時に読み取って自動で会計ができる無人レジを導入していますよね。あの仕組みがRFIDタグを使ったものです。
工場での加工や建設現場では、切削や塗装、汚れなどでバーコードやQRコードがうまく読み取れない可能性があるので、製品の内部にRFIDタグを埋め込んで製品を管理しようというものです。通常、マンション一物件で使うパネル壁材は500種類を超えます。それをミスなくすべての階、すべての部屋に正しく配布するだけでも大変な作業になるわけです。この流れをRFIDタグで管理できれば、相当な省力化につながるはずです。
ここを起点に新たなビジネスの形を
―【KYOWA SEISAN 新宿ギャラリー】がオープンして3ケ月ほど経ちましたが、お客様からの反響などはいかがでしょうか?
柘植 私たちのようなメーカーにとっては、「新宿は建材の聖地」のような認識がありますので、以前からOZONEへの出展を検討していて、ようやく実現したものです。先日は、たまたま通り掛かったエンドユーザーのお客様が、ギャラリーの入り口近くに展示してある青海波文様のレーザー加工パネルに目を留められて気に入っていただき、ご成約にまで至った事例がありました。これまでの私たちの商売は、ほぼ100%がBtoBですし、納入先もホテル、旅館、飲食店などが中心でした。今回の例は珍しいBtoCの出会いがきっかけのお取引になるわけです。本社にしかショールームの無かった私たちにとって、これは新しい商売の形と言えるものです。まだまだ手探りの状態ですが、この【KYOWA SEISAN 新宿ギャラリー】を足掛かりにして、これまでにない新しい展開、新たなビジネスの形を作っていきたいですね。
―ショールームよりメッセージ
KYOWA SEISAN 新宿ギャラリーでは通常無人で運営をしています。ご自由に御覧ください。当展示場は静岡本社とネット回線で繋がっていますので、展示場のモニターで当社営業マンとのお打ち合わせが可能になっております。是非、お立ち寄りください。
※文中敬称略
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※2023年6月時点の情報です。最新の情報とは異なる場合がございます。