100社を超える企業の建材、家具、住宅設備など、住まいに関する個性豊かな製品のカタログやサンプルを、どなたでも自由に閲覧・比較検討していただける、リビングデザインセンターOZONE 3Fの【OZONEカタログライブラリー】。

その出展企業の一つ、三浦工業株式会社は、「熱・水・環境のベストパートナー」のコーポレート・ステートメントのもと、国内トップシェアを誇るボイラ製品を核に、水処理機器、食品機器、メディカル機器など様々な製品を扱う企業です。住宅設備分野においては、約半世紀にわたる業務用軟水化技術を投入した、国内初の本格的な家庭用軟水器「ソフティナ」シリーズを展開しています。ボイラで名を馳せる企業がなぜ家庭用軟水器に行き着いたのか、軟水ライフ統括部営業部長の鶴岡健吾さんにお話を伺いました。

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家庭用軟水器「ソフティナ」シリーズの主力商品「軟太郎ソフティナ」。住宅の水配管の大元に設置し、飲料水・生活水を含め、一軒まるごとの水を軟水化する屋外設置ユニット。

精麦機に必要な「蒸気」から始まったボイラ開発

―まずは三浦工業の創業時の姿や、中心事業であるボイラの製造販売に至る道筋などをお話ください。

鶴岡 創業は1927年(昭和2年)で、当時は「精麦機」という農業機械の製作所としてスタートしました。既に精米機市場には優秀な他社製品が出回っていたので、弊社は麦で勝負しようということになったようです。主に飼料用の精麦機を作っていたんですが、硬い生のままでは家畜の餌にならないので、蒸気で蒸して平らにつぶします。これを圧扁(あっぺん)といい、栄養価も消化も良い、いわゆる「押し麦」にします。その蒸す工程にスチームボイラが必要だったわけです。当初は他社のボイラを導入していたんですが、それを自前での製造に切り替えていったのがボイラ製造の始まりです。

ボイラの運用には「ボイラ技士」という国家資格が必要ですが、1959年(昭和34年)の労働安全衛生法の規制緩和によって、ある基準以下の小さなボイラは無資格でも扱えるようになり、それを受けるかたちで「ZP型」という小型貫流ボイラを独自に開発しました。これが多くの商店や中小企業の熱源として広く普及し、日本の産業を支える裏方として大活躍しました。2015年には日本機械学会から「機械遺産」に認定されています。

―それらのボイラを導入されたのは、主にどういう会社だったのでしょうか?

鶴岡 日常的にスチームやお湯が必要なクリーニング店や、豆腐屋さん、和菓子屋さんなどの食品製造業や飲食店などですね。当時は、工場に収めるような大きなボイラではなく、街の暮らしを支えている小さな商店や事業所に、資格不要の「小さなボイラ」をお届けするのが弊社の方針でした。昭和40年代には、「世界一安くて良いボイラを創ろう」という社内スローガンがありました。

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「機械遺産」認定のZP型ボイラ(1959年)

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本社内に掲げられた1968年当時の企業スローガン「世界一安くて良いボイラを創ろう」の看板

―専門知識や資格を持たない街の商店向けのボイラ製造となると、不具合や故障への対応が大変だったのではないでしょうか?

鶴岡 そうです。当初はそこに大きな資金やマンパワーを割く必要がありました。そこで1969年には「ZM契約」 という有料メンテナンス点検制度を開始しています。ボイラの代金とメンテナンス費をセットで前払いしていいただく制度で、業界初の試みでした。壊れたら直す、いわゆる突発修理対応から、定期的な点検で故障の予兆をいち早く把握し、大きなトラブルになることを未然に防ぐ予防型へと、メンテナンス手法を転換することを目的とした制度です。

この制度の確立によって、常に安定したボイラの性能を維持することが可能になりました。同時に、故障修理で損を出さないために開発技術も大きく前進し、大きな故障を減らすことで無駄な資材や人件費も節約できるようになっていきます。1989年(平成元年)には、これも業界に先駆けて、各ボイラをセンサーで常時監視する「オンラインメンテナンス」を開始しています。当時はインターネットが普及する前ですから、電話回線でセンターとつないでいました。これらが弊社の基本的なビジネスモデルとなり、現在に至っています。

「家庭用軟水器」開発への道のり

―ボイラのオーソリティとして会社が大きくなっていくなか、一見、別のジャンルに思える「軟水器」という製品の開発は、どのようにして始まったのでしょうか?

鶴岡 家庭用のヤカンや電気ポットでも、長い間使っていると白い粉のようなものが付着してきますよね。水に含まれるカルシウムやマグネシウムなどが沸騰によって濃縮されたもので、私たちはあれを「スケール」と呼びます。ボイラの内部でも同じことが起こっていて、スケールの蓄積によるエネルギーロスや目詰まりによる破裂事故は、ボイラの大敵として私たちの長年の悩みの種になっていました。

ある時、まだ占領下にあった沖縄の駐留米軍が、洗濯用水のために軟水器を使っているらしいと、弊社の先輩方が聞きつけてきます。サンゴ礁を起源とする沖縄は、国内でも有数の「硬水」の地質です。カルシウム成分が洗剤の効果の邪魔をするので、洗濯の汚れ落ちがあまり良くないんです。そこに注目し、スケール低減とボイラ延命化のため、ボイラに水を送り込む前に軟水器を挟んでみてはどうか…… というアイデアが生まれました。当初は輸入した軟水器を組み込んでいたんですが、やがてそれも自社で製造するようになり、業務用軟水器の開発が始まります。約50年前のことですね。次第に小型化も進み、90年代頃には、ボイラと軟水器は必ずセットで製品化されるようになっていきます。

―ボイラが必要になればボイラを、軟水器が必要になれば軟水器を自ら製造して自社製品に組みこんでいった社史の流れを見ても、三浦工業さんには、新しい領域への挑戦をけっして恐れない、とてもイノベイティブな社風を感じますね。しかし、ボイラとセットで使うことが前提だった業務用軟水器を、家庭用にリファインして製品化するというのも、また大きな決断だったのではないでしょうか?

鶴岡 いえ、これは言ってしまえば単なる遊び心のようなものでした(笑) スチームのセントラルヒーティング暖房が廃れてエアコンに移行していったように、弊社のスチームボイラもいつまでも順調とは限らないわけです。多様な製品を扱えるメーカーに生まれ変わるべく、食品加工機器や医療用機器など、様々な新規事業を試みていくんですが、その中にポツンとあったのが「家庭用軟水器」というアイデアでした。弊社は創業からずっとB to Bの商売ばかりでしたので、「家庭用」というB to Cの領域に踏み込むのはなかなか難しく、創業者を含むベテラン経営陣からは反対されていました。

しかしある時、軟水器を通した水で手を洗ってみた幹部社員が、そのツルツル・スベスベ感に驚いて、一気に製品化にゴーサインが出たという逸話があります。先ほどの洗濯の話と同様、軟水だと石けんカスが作られないのでキシミやツッパリ感がなく、肌がしっとりスベスベになるんです。それが1996年発売の弊社の最初の家庭用軟水器「HO型」につながっていきます。この話は同時に、見た目で違いがわからない軟水の意義や効果を実感してもらうためには、「体験」がとても大事だという教訓にもなっています。発売当初は、軟水の良さを体験できる銭湯を増やすよう、全国の支店長に命じた時期もありました。

「ソフティナ」シリーズの確立へ

―製品化に至ったとはいえ、前例のない「家庭用軟水器」の一般家庭へのセールスは、なかなか難しかったのではないでしょうか?

鶴岡 そうですね。当初は手探り状態だったので、小型の業務用軟水器を、ほぼそのままの形で1年間限定のモニター商品として販売する方法を取ったんですが、なかなか売れませんでした。軟水器の心臓部であるイオン交換樹脂のメンテナンスには、定期的な特殊塩(イオンリフレッシャー)の供給が必要なんですが、その手間をお客様に強いるのは大きなマイナスイメージになります。それを避けるために自動供給する仕組みを作ったり、その仕組みを有効に機能させるために、供給タイミングにバラツキが出ないようイオン交換の性能を上げたり、更なる小型化を図ったりと、モニター販売を活用して改善を積み重ねていきました。それが現在の主力商品であり、住宅一軒まるごとの水を軟水化する屋外ユニット「軟太郎ソフティナ」につながっていきます。

―では、その「軟太郎ソフティナ」の特長を教えてください。

鶴岡 「軟太郎」という商品名は以前からあったんですが、2017年に「軟水生活」というライフスタイルそのものを提案するブランドとして再編し、ソフティナシリーズと改めました。住宅の水配管の大元に接続する装置なので、水道法の基準に適合している必要があります。「軟太郎ソフティナ」は給水装置として水道法基準への適合を認証する第三者機関である「一般財団法人 電気安全環境研究所(JET)」の認証を取得した、国内初の本格的な家庭用軟水器となります。WHOの飲料水水質ガイドラインでは、硬度60mg/L未満を「軟水」と呼びますが、私たちが「軟太郎ソフティナ」で提供する水には、硬度1mg/L以下というとても厳しい基準を設けています。

石けんカスのできにくい軟水の特徴として、洗濯の汚れ落ちの良さと美肌効果のお話をしましたが、他にもまだあります。浴室の湯アカや洗濯槽のカビ、洗濯物の黄ばみ、排水溝のヌルヌルなども石けんカスが原因なので、これらの低減が図れます。要するに家事の手間や時間も大きく減らすことができるわけです。このように住宅の水道水をまるごと軟水にできる「軟太郎ソフティナ」には、生活をより豊かにする大きなメリットがあります。

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浴室専用(シャワー専用)室内機「美肌っ子ソフティナ・ミニ」。

―ソフティナシリーズは、さらに浴室シャワー専用ユニットの「美肌っ子ソフティナ・ミニ」や、さらに小型のユニット「ソフティナ・ポッド」に展開していますね。

鶴岡 「美肌っ子」自体は2000年からある商品ですが、当初は軟水の良さを実感してもらい、「軟太郎」を買っていただくための体験用のモニター機でした。ただ、「軟太郎」は住宅の水配管への接続が前提なので、マンション各戸への導入が難しいわけです。マンション住まいのお客様から、「あの小型のモニター機は売っていないのですか?」という問い合わせを多くいただくようになってきたので、正規の商品として開発したものです。

「ソフティナ・ポッド」は、主に美容方面への需要とECサイトでの販売を見据えて、さらに手軽で小型のユニットとして開発したもので、専用にデザインしたウェブサイトで販売しています。現在では、これらの家庭用軟水器開発で培った細かな諸技術を、逆に本業の業務用軟水器に応用するほどになっています。

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電源不要のシャワー用小型軟水器「ソフティナ・ポッド」。専用ECサイト直販による新販路の開拓も行っている。

―最後に、家庭用軟水器事業の今後の夢などがあれば、お聞かせください。

鶴岡 先ほども話に出ましたが、戸建て住宅への設置が前提の現状の「軟太郎」は、どうしてもマンションが弱点なんです。やはりマンションに対応した軟水器の開発が夢ですね。「ミニ」や「ポッド」をお求めのマンション住まいのお客様からも、水道水すべてを軟水にしたいというご要望を多くいただいています。ただし、マンションの場合はあらかじめ軟水器の設置を見越した設計・施工をしておく必要があるので、デベロッパーさんとの協議や、棟全体の設備設計の中への位置づけが不可欠になってきます。製品の開発と同時に、そういう難しい条件を乗り越える必要があるわけですが、その実現に向けてがんばっているところです。

―未知の領域だった家庭用軟水器でB to Cのビジネス形態にチャレンジした結果、業務用軟水器などのB to B向けの製品にもその技術がフィードバックされるという逆転のシナジー効果を得た三浦工業の開発姿勢。そこには、「遊び心」と謙遜する余裕とユーモアの中に、「虎穴に入らずんば虎児を得ず」を地で行く鋭い挑戦心と開拓精神が見え隠れしています。そこから生まれたソフティナシリーズが、自分なりのライフスタイルや健康のために軟水を必要とする人たちへの福音となり、今後さらに、その輪が広がっていくことを願います。

※文中敬称略

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※ソフティナ、ソフティナ・ミニ、ソフティナ・ポッド、ZM、オンラインメンテナンスは三浦工業(株)の登録商標です。
※2023年9月時点の情報です。最新の情報とは異なる場合がございます。

三浦工業(株)

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三浦工業株式会社は、「熱・水・環境のベストパートナー」のキャッチフレーズの下、ボイラ製品、水処理機器、食品機器、メディカル機器、環境機器など様々な製品の製造販売とメンテナンスを行う企業。特に住宅設備機器においては、約半世紀にわたる産業用軟水装置開発で培った技術を投入した、水道水を軟水に変える国内初の本格的な家庭用軟水器「ソフティナ」シリーズを展開しています。

三浦工業株式会社からのメッセージ

当社は「環境にやさしい社会きれいで快適な生活の創造に貢献します。」という企業理念を掲げています。
生活水を硬度1mg/L以下の軟水に変えることで、快適であり、洗剤を減らし、排水による環境負荷を低減します。
軟水生活は当社の企業理念ならびに持続可能社会(SDGs)の実現に必要不可欠です。
水を変えれば暮らしが変わる。まずはご自宅から、環境に優しい快適生活、「軟水生活」を始めてみませんか。

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