自然素材の持つしなやかさにより体圧を分散する独自のベッドシステムで、理想的な寝心地を提供するスイスの寝具メーカー:ヒュスラー・ネスト社。リビングデザインセンターOZONE 4Fにショールームを構える「ヒュスラー・ネスト東京」は、その日本における販売拠点の一つです。このショールームの運営を担い、ヒュスラー・ネスト社の日本総代理店を務めるのが、長野県岡谷市に本拠を持つ株式会社カネルという企業です。信州の企業が、なぜスイス製の自然志向・健康志向寝具の輸入販売の道に乗り出していったのか。ヒュスラー・ネスト東京 セールス・マネージャーの安藤正行さんにお話しを伺いました。

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リビングデザインセンターOZONE 4F 【ヒュスラー・ネスト東京】

自然豊かな信州からスイスへの共感

―株式会社カネルとは、そもそもどのような会社なのでしょうか。

安藤 諏訪湖のほとり、長野県岡谷市に明治22年に創業した「金ル組」という会社が元になっている古い企業でして、創業時はシルクの製糸業を営んでいました。終戦を機に木工業に転業して家具の製造を始め、その後、不動産業などにも進出しています。今は5代目の社長ですが、木の文化に馴染みのある信州という土地柄もあって、北欧の生活や家具作りに共鳴するところがあったようです。1992年頃からデザインや自然素材にこだわった家具の輸入・販売を手掛けるようになりました。長野は軽井沢などの別荘地やリゾートも多く抱えているので、そうした地域に住む方たちやホテルに向けて、カール・ハンセン&サンやPPモブラー、天童木工などの家具を販売する、長野県エリアにおける代理店なども務めています。また、県内の建築家やインテリアデザイナーからの発注に応える、システム家具などの木製品製造部門も持っています。

―製糸業、木工業を経て、現在ではインテリアや家具販売などにも事業が広がっているということですね。では、スイスのヒュスラー・ネスト社とは、どのようにして出会われたのでしょうか?

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明治時代、「金ル組」が製造していた
輸出用シルクブランドの商標

安藤 訪欧中の社長が家具の展示会を訪れた際、目に留まったのがヒュスラー・ネスト社のベッドシステムでした。健康や環境に優しい素材を使用し、私たちの生活をより豊かにしてくれる寝具ということで大いに共感し、日本での代理店を名乗り出たというわけです。2004年から総代理店として日本での販売責任を負っています。

―具体的には、ヒュスラー・ネスト製品のどのような部分に共感され、総代理店を引き受けるまでに至ったのでしょうか?

安藤 まず一つが、徹底した自然素材へのこだわりですね。プラスチックの使用を減らすとか、化学物質とホルムアルデヒドの問題などは今でこそ一般的になってきていますが、私たちが代理店を始めた20年前は、日本ではまだまだ注目も薄くて、あまり理解されていませんでした。でも、ヒュスラー・ネスト社は、さらにその20年前、1982年から一貫して木材や樹液、植物繊維や羊毛など、100%天然かつ再生可能な原料だけを使用した寝具を、ほとんどモデルチェンジも無しに作り続けています。最近になってようやく、そうした取り組み姿勢が評価される世の中になってきたということですね。

もう一つが、健康的な睡眠を追求する姿勢です。ヒュスラー・ネスト社の創業者:バルサザール・ヒュスラー自身が、長年背中の痛みに悩まされ、より良い眠りを得るためにはもう自分で作るしかない、と、睡眠とベッドのメカニズムを研究し続けた結果、寝具メーカーとしての創業に至ったという経緯があります。ですので、体圧の計測や背骨形状の整形外科的な研究、睡眠時の脳波測定調査などの「良い眠り」を説明するエビデンスはしっかりと持っています。創業者が自分自身の健康のために始めた活動がベースにありますから、企業活動や製品の中に「他人事」がないんですよね。信頼するに足る企業姿勢だと考えています。

また、実際にこのベッドを使った人達からの評判の良さ、つまり口コミだけで販売を広げているというのも特徴の一つですね。本社がスイスですので、周辺にヨーロッパ各国のリゾート地が多く、すでに200ヶ所以上のホテルに納品され、好評を得ています。その宿泊者が寝心地の良さに驚き、ベッドに刻まれた「ヒュスラー・ネスト」のマークを見て問い合わせしてくる……という場合が多いようです。自然素材を惜しげもなく使っているので、どうしても値段が高くなりますから、さらに価格に上乗せされてしまう広告費はほとんど使わない主義なんだとか。このあたりも企業として親近感を感じる部分ですね。実際、私たちのヒュスラー・ネスト製品の売り方も基本的には同じような形で、寝具問屋と組合を通じてホテル・旅館の調達品として納入する形がほとんどでした。OZONEにこのショールームを構えて、一般の方にもアピールするようになって、まだ5年ほどしか経っていないんです。

独自のベッドシステム「リフォーマエレメント」

―様々な研究の末に到達したという、ヒュスラー・ネスト社が提案する寝心地とは、どのような仕組みで実現しているのでしょうか?

安藤 基礎になっているのが、「リフォーマエレメント」と呼んでいる無垢の天然木のしなやかさだけを利用した、トリメール板という棒状のウッドスプリング・システムです。ヨーロッパでは特許を取得しています。アスペン材という弾力のあるヤナギ科の木材を中心にし、両脇を少し硬めのブナ材でサンドした構造で、体圧を軟らかく支えることのできるしなやかさを得ています。この棒を「すだれ」や「すのこ」のようなイメージで連続的に敷き詰めて寝床のベースにするんですが、釘やビスなどの固定金具は一切使用せず、オーガニックコットンで編み込まれた布地のポケットに順番に差し込んでいくだけの、極めてシンプルな仕組みで出来上がっています。このリフォーマエレメントがしなやかに体重を受け止め、寝返りを打つとその形に応じて一緒に動いてくれます。また、木材の弾力性で適度に押し返してもくれます。この仕組みが理想的な体圧分散を生み出し、姿勢を正し、腰や脊椎の痛みを改善してくれるだけでなく、一日の疲れをしっかりと取り除くことのできる、質の高い睡眠につながるわけです。

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ヒュスラー・ネストのベッドシステムの心臓部「リフォーマエレメント」。2 層のトリメール板(上層:6mm厚40本、下層:6mm厚20本+10mm厚20本)の配列で体圧を均一に分散。上部のトリメール板が身体の各部位の動きに合わせて体圧を支え、間にはさみ込まれた4 本のラテックス部分が、体圧を下部のトリメール板に分散して伝える仕組み。この構造によって、自然な寝姿である背骨のS字カーブがキープされ、横向きになったときにも同様に背骨のラインを水平に保つことができる。

―「リフォーマエレメント」の上に重ねるマットレスやベッドパッドなどもすべて自社製品とのことですが。

安藤 そうです。リフォーマエレメントのせっかくのしなやかさが、上に敷く寝具に伝わらなければ何の意味もありません。リフォーマエレメントの効果を体に伝える、適度な硬さと厚みの専用マットレスやベッドパッドも、すべて自社で開発・製造しています。マットレスは石油系のウレタンフォームや金属スプリングなどを一切使用せず、ゴムの木の樹液から生産される天然ラテックスだけを使っています。石油系素材に比べてしなやかで、柔軟性、弾力性、耐久性に優れています。また多孔構造により調湿機能も高く、蒸れません。抗菌性にも優れていて、極めて衛生的です。化学物質に過敏な体質の方でも安心してご使用いただけます。

おなじく、ベッドパッドも家庭で洗濯が容易なコットンファイバー、竹の繊維を原料としたバンブーファイバーなどの植物繊維素材、あるいは100%バージンシープウールを使用したものなどを用意しています。いずれも重視しているのは、人体が発する湿気を速やかに放出する仕組みです。ヒュスラー・ネストは、人間工学に基づく体圧分散機構同様、この「通気性」を寝心地を左右する重要課題として位置付けています。そもそものリフォーマエレメントが木材を「すのこ状」にならべたものなので通気性は抜群です。その上に重ねるマットレスやベッドパッドも、多孔構造の天然ラテックスや天然の植物繊維や羊毛など、調湿機能に優れた素材を選択しています。

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ヒュスラー・ネストのベッドシステム全体像。すべてのパーツが個別に販売されており、修理や交換が容易に行える。

自然と健康に良いものを長く使い続けたいという若い世代にも

―これらのシステム全体を支えるベッドフレーム自体も、自社でご用意しているんですね。

安藤 はい。ヘッドボード・フットボードが付いたスタンダードタイプの「コンフォート」と、寝床全体が宙に浮くようなデザインの「コーチ」の二種類があり、それぞれアルダー材、ブナ材から選択可能です。いずれの木材も無塗装で、天然の蜜蝋ワックスだけで仕上げています。他の部材もそうですが、自然素材の良い物だけを正直に求めて行くと、化学製品や金属部品、あるいはウォーターベッドなど、最新の技術で作られた他のベッドシステムよりも、逆により長く使い続けられるようになっていくというのも不思議なものです。しかもヒュスラー・ネストのベッドの部材は、すべて個別でも購入できます。もしどこかに不具合が出ても、リフォーマエレメントのトリメール板一本からでも交換が可能ですので、ベッド全体を丸ごと買い替えるような無駄なことはしなくて済むわけです。健康と寝心地のための機能を最優先にと考えてきましたが、結果的に、耐久性、メンテナンス性、サスティナビリティの面でも、とても質の高い製品に仕上がったと言えるでしょう。

ヒュスラー・ネストのベッドシステムを支える、ごくシンプルな寝台としての「コーチ」タイプ

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ヘッドボード・フットボードも付いた、スタンダードなスタイルのベッド「コンフォート」タイプ

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ヒュスラー・ネストのベッド。いずれもアルダー材とブナ材の2 種類があり、アルダー材はフィンガージョイント(またはドーブテイル)と呼ばれる無垢の集成材を、ブナ材は無垢材を使用している。

―今後、このヒュスラー・ネストのベッドシステムの販売は、どのように展開・拡大させていきたいとお考えでしょうか?

安藤 そうですね。この寝心地の良さを分かってくださるホテルや旅館、そこに寝具を卸す寝具問屋さん、そしてこのブランドにたどり着いてくださった個人のお客様を大事にしながら、これからも地道にファンを増やしていきたいですね。

戦後すぐの日本の家って、まだソファーやベッドなどの洋家具は何もなくて、座敷にちゃぶ台を置いて食事をし、それを片づけて布団を敷いて寝る毎日だったわけですよね。そういう経験をしてきた世代が、いま定年を迎えて、家に居る時間が長くなったら、やっぱり健康で充実した時間を過ごしたいという気持ちになるんじゃないでしょうか。そういう方々にこのベッドを届けてあげたいですね。

ただ、ヒュスラー・ネストのファンはけっして年配の方だけではありません。初期投資の費用は少しかさんでも、長い間使えて体に良いものを選びたいという志向の若い世代の方にも人気があります。体が資本のスポーツ選手や歌手の方にも評判が良いようで、先日などは、とあるミュージカル俳優さんがセミダブルのセットを購入されましたが、これを地方公演で宿泊するホテルにも、すべて持ち込みたいと言われていました。その日の疲れは、その日のうちに取り除いておきたいそうで、それが可能なベッドとして信頼をいただいています。そういう方の期待に応えることが出来る自然素材の力は、やはりすごい、と思いますよ。

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リビングデザインセンターOZONE 4F「ヒュスラー・ネスト東京」ショールーム内にある、個室型の睡眠体験ルーム

―自身の現在の健康のためだけでなく、未来のために、子どものために今から投資をしておきたいという若い世代も確実に増えてきている現在。ヒュスラー・ネストの製品と株式会社カネルの販売の形は、自然と健康に良いものを長く使いたいという層に、ゆっくりとですが着実に届いているように思えます。リビングデザインセンターOZONE 4Fの「ヒュスラー・ネスト東京」ショールームには、実際に数時間の睡眠をとることができる完全個室型の睡眠体験ルームも完備しています(要予約)。ぜひ一度、その寝心地と天然素材の感触を試してみてはいかがでしょうか。

―ショールームよりメッセージ

ヒュスラー・ネストのベッドの機能は、実際に体感していただいてこそ、初めてご理解・ご納得いただけるものです。OZONE 4F「ヒュスラー・ネスト東京」には、睡眠体験をしていただけるトライルームもご用意してありますので、是非ご自身で長時間お試しいただき、寝心地の良さを実感してみてください。

※文中敬称略


※2024年7月時点の情報です。最新の情報とは異なる場合がございます。

ヒュスラー・ネスト東京

館内ショールーム

ヒュスラー・ネストは、長年背中の痛みにより良い睡眠を得られなかった創業者のバルサザール・ヒュスラーによるオリジナルベッドシステムの開発から始まりました。
人の身体をベッドに合わせるのではなく、ベッドが人の身体に順応しなければならないという基本概念のもと、人間工学的にデザインされ、人体解剖学の知識も加えて完成したベッドは、睡眠中の人の動きに順応します。ショールームで理想の寝心地をご体感ください。