リビングデザインセンターOZONE 「わたしのサス活-未来のためにできること-」に連動し、私たち生活者の誰もが身近なサステナブルな活動へ一歩踏み出すため、あるいは、あらためて「暮らしにとっての真の豊かさ」とは何かを考えるきっかけとして、特別対談を行いました。
気候変動の危機に対応し、若者たちが、サステナブルな社会の構築を目指すプラットフォームとして設立された「一般社団法人SWiTCH」の代表理事:佐座マナ氏と、ライフスタイルブランド「ワイス・ワイス」を1996年に創業し、合法木材、地域材などによるサステナブルな木材調達「フェアウッド」を業界に先駆けて2008年に開始・推進してきた佐藤岳利氏のお二人を迎え、私たちの生活の中で、どんなことが「サス活」に繋がり、その中で「デザイン」はどのような役割を担うべきなのかを伺います。
佐座 槙苗(さざ まな)(一般社団法人SWiTCH 代表理事)
佐藤 岳利(さとう たけとし)(株式会社佐藤岳利事務所)
前編ではお二人の取り組みとともに、国内外の「サステナブル」への姿勢・現状について伺います。
「日本は世界のサステナブルの波に乗り遅れている」
ーまずは、佐座さんが代表理事を務める「一般社団法人SWiTCH」の活動について教えてください。
佐座
ありがとうございます。「SWiTCH」は非営利の一般社団法人として主に環境教育を軸に活動しています。
若者が世代や業界を超えて大人世代と共創するためのプラットフォームとなることを目指し、日本が世界のサステナブルの波に乗り遅れてしまっている「三つの原因」をメッセージとして発信し、その是正を提言しています。
まず一つが、気候変動に関する決議の場に、そのインパクトを一番受ける若い世代が参加できていないことです。日本の国会議員の平均年齢は60歳に近く、国際的に見て高齢です。気候変動の世の中を生きていく若い世代が求める社会活動や経済の仕組みを考えてくださったとしても、残念ながらそこには認知のギャップが存在しています。私たちは、未来を左右する決議の場にどうすればもっと若い人たちが参加でき、社会変革にどうつなげるのかを、活動の軸として常に考えています。
ー二つ目は……?
佐座 二つ目は、日本に入ってくるサステナブルに関する情報が圧倒的に少なく、関心も優先度も低いという問題です。そこには言語の課題が関わっています。日本は英語を勉強している人口は多いものの、仕事や議論のレベルで英語を使いこなせる人材が、とても少ないのが現状です。
サステナビリティに関する国際的な潮流や最新のテクノロジーに関するトレンドをキャッチするために、また、その指標作りや決議の場に参加するために、言語に対する認識を変えていかなければならないと思います。
家庭の食卓で気候変動の話題がどれくらい出るか、という調査で、欧米では「毎日」、日本では「週一回程度」というデータもあり、「環境への意識」に大きな差があることが明らかです。今後は、環境意識の差が、そのまま経済的な格差となってしまうと言われています。日本らしさを大切にしつつ、新しい言語感覚、新しい経済の仕組みに向き合っていくことが、大切だと考えています。
—では、三つ目の原因はなんでしょうか?
佐座 三つ目は、世界との連携が充分にとれていないことですね。現在、環境面の指標作りは、ヨーロッパが中心になっています。日本は地理的に遠いという不利な状況にありますし、その指標作りの場に参加していなければ、国際的な存在感も小さくなってしまいます。日本は今、中国、アメリカ、インド、ロシアに次ぐCO2排出量世界第5位で、裏を返せば、世界中から「積極的に状況を変えていく責任があるよね?」という目で見られているということに他なりません。
佐藤 日本は昨年も「化石賞」を受賞しました。
佐座
そうなんです。COP(国連気候変動枠組条約締約国会議)の期間中に発表される、気候変動対策に後ろ向きな行動を取った国に与えられる不名誉な「化石賞(Fossil of the Day)」を、日本は4回連続で受賞しています。
でもこれは、注目してる、応援してるよ、というメッセージでもあると思っています。
「期待しているのに、できるはずなのに、どうしてやってくれないの?」というような。そして化石賞に対する日本の反応も見られていますよね。ネガティブなことを言われてただ黙っているのか、よりオープンな姿勢を見せて、「期待以上のものを出して見返してやろう」と奮起するのかを注目されていると思います。
佐藤 「やってる感の演出」は、世界にはまるで通用しないということですよね。
佐座 本当にそうです。世界が気候危機を強く意識するきっかけになった、1997年のCOP3(第3回気候変動枠組条約締約国会議)の「京都議定書」は、日本の京都で作られましたよね。これらは、これまで佐藤さんたちの世代ががんばってきた一つの証でもあると思います。でも、そのレガシーがうまく継承されていない。これは本当にもったいないことです。そのレガシーの継承として、環境を良くするための活動や、国際的にリーダーシップをつかみ取っていく人たちが、日本から誕生することが求められているのだと思います。日本が直面している課題として、私が考えているのは、この三つですね。